すずき設備社長の鈴木だ。ガス給湯器には以下のような種類がある。
- 号数(燃焼能力):24号、20号、16号
- お湯張り機能:フルオート、オート
- 燃費効率:エコジョーズ、従来型
- 設置場所:屋外、屋内
- 設置方法:床置き、壁掛け
それぞれにメリットやデメリットがあるのだが、細かい部分はあまり知られていないし、各メーカーは少しでも高いガス給湯器を売ろうと必死になっている。
これまでに10年近い年数を共にしてきた新しい給湯器を交換する際、この間には色々な機能を持った新製品が登場しているわけで、単に「今まで使ってきた給湯器の後継機種」を見るだけでは勿体ないぞ。
以下では「ガス給湯器の選び方」について解説していく。
ガス給湯器の号数の違い
ガス給湯器の号数の違いとは?
- 24号:水温+25℃のお湯を1分間に24リットル出湯する能力
- 20号:水温+25℃のお湯を1分間に20リットル出湯する能力
- 16号:水温+25℃のお湯を1分間に16リットル出湯する能力
冒頭にも書いたように、ガス給湯器の号数とは「燃焼能力」を指している。定義は上記の箇条書きの通り「水温+25℃のお湯を1分間に何リットル作れるか」だ。家庭用の給湯器は「16号/20号/24号」の3パターンが主流で、他にも瞬間湯沸かし器や浴室設置のバランス釜なんかは号数が1桁だったりする。
また病院や老人ホーム、美容室や厨房などに設置されている給湯器は30号以上だったり、50号という能力を持っていることも珍しくない。つまり早い話が「家が大きい(配管の距離が長い)、家族の人数が多い、浴槽が大きい、お湯を使う機会が多い」という場合は、号数が高い給湯器を選ぶのが無難ということだ。
ただし号数はあくまで「1分間に作れるお湯の量」であるため、例えお湯を使う機会が多くても「同時に使う瞬間が少ない」というのであれば、そこまで高い号数にこだわる必要はないだろう。
台所でお湯を使いたいタイミングで、誰かが入浴中(シャワーや追い炊きを使用)ということが多い場合は、高い号数の方が利便性が高いぞ。
4人家族は24号が最適って本当?
これはノーリツのオンラインカタログから抜粋したものであるが、24号の例に「4人家族」とある。そして20号は「夫婦2人」という例が挙げられている。これを真に受けると「1人暮らしは16号、2人なら20号、それ以上は24号」が最適という印象を受けるのではないかと思うが、ハッキリ言ってここまでシビアに考えなくてもいい。
前項でも説明したように、号数はあくまで「水温+25℃のお湯を1分間に何リットル作れるか」であり、複数個所でお湯を同時に使用する機会が少なければ不便さはほとんど感じないだろう。それに水温が深く関係してくるため、北海道や東北の寒い地域における冬場ならともかく、そこまで寒くない地域に住んでいるならここまでの影響を受けないことは想像にたやすい。
弊社は東北地方にて活動しているが4人家族で16号の給湯器を使用している家庭もたくさんあるし、恐らく20号の給湯器を使用している家庭に新しく16号を取り付けたところで、違いに気付ける人はそんなに多くないのではないかと思う。
メーカーは少しでも高いグレードの物を売りたいと考えるのが自然なので、あくまで「号数が高い方が不便さを感じにくい」ということでこのように「3人以上は24号が最適」というプレゼンをしているが、これは聞き流しても問題ないというのが弊社の見解である。
ガス給湯器のお湯張り機能の違い(フルオートかオートか)
フルオートとオートの違い
フルオートかオートで迷うユーザーは少なくないが、基本的な違いは「お湯張り機能の性能の違い」であり、上記表にあるような差が設けられている。各メーカーや機種によっても細部は変わってくるが、ここでは大まかにリンナイのガス給湯器を解説していく。
給湯器はオートで十分!オートとフルオートで迷ったら読んでほしい
おいだき配管自動洗浄
お風呂の排水栓を抜いた時に自動で配管を洗浄してくれる機能だ。これがあると次にお湯張りをする際、清潔なお湯を張ることができる。ハッキリ言ってこの機能は、追い炊き配管を綺麗に保つのには最適と言えるだろう。
ただし1回の洗浄に5リットルほどのお湯を使用するため、水道料金が高くなったと感じるユーザーも多い。エコジョーズにしてせっかくガス代が低くなったのに、その代わりに水道料金が高くなったら本末転倒だということで、この機能をOFFにしているユーザーもいるということは知っておこう。
自動たし湯
浴槽内のお湯が減った時に、自動で湯量を増やしてくれる機能だ。体の大きい人が入ってお風呂が溢れてしまった場合、次に入る人が湯量が少なくて困ってしまうということがなくなる。
しかしオートタイプでもボタンで足し湯はできるため、それを押すことすらも面倒だという人にはおすすめかもしれないが、逆に「不要な場面で足し湯をされると水道料金の兼ね合いもあって嫌だ」というユーザーには不要な機能かもしれない。
入浴検知による自動沸きあげ
本来、ふろ自動ボタンでお風呂を沸かした場合は保温動作に入るようになっているが、それよりも高精度でお湯を沸かし上げてくれる機能だ。
これも二人目、三人目が「いちいち追い炊きボタンを押したくない」などの理由があるならおすすめできるが、自分で追い炊きをするのが手間に感じないのであれば不要な機能と言える。
残り湯の沸かし直し
お風呂を沸かすにはふろ自動ボタンと追い炊きボタンの2種類がある。ふろ自動ボタンは「お湯張り+追い炊き+保温」であり、フルオートの場合は問題ないがオートの場合だとお湯張りの時点で不具合が出ることがある。
オートのふろ自動は基本的に「浴槽が空の状態で使用する」という前提があり、浴槽内にどれだけのお湯が入っているかを検知する能力が備わっていない。つまりフルオートならふろ自動ボタン一つで済むものが、オートだと「足し湯ボタン+追い炊きボタン」という二段階になってしまう。
エコジョーズか従来型か
エコジョーズとは「従来型よりも燃費が良くなったガス給湯器」と思ってもらえれば問題ないだろう。確かにガスの消費量は抑えられているが、導入前に知っておきたい特徴やデメリットも存在する。
以下ではえこじょーすのメリットやデメリット、簡単に仕組みについて解説していこう。エコジョーズにするか従来型のガス給湯器にするかで悩んでいる読者は、ぜひ参考にしてくれ。
エコジョーズの仕組み
ここではエコジョーズの燃費がなぜ良いかについて説明する。簡単に言うと「今まで捨ててた排気を更に熱交換してから捨てよう」という仕組みにしたのが高効率ボイラーだ。
従来型の煙突から出される排気ガスは約200℃で非常に熱い。しかし200℃もの気体なら「そのまま捨てずに水を温めるのに使えるんじゃないか?」というのがエコの試みである。
エコジョーズのメリットとデメリット
従来型ガス給湯器と比較すると燃費(コスパ)が良い
リンナイによると年間で約18000円ほどのガス料金が浮く計算らしい。ただし色んな状況が噛み合って算出された数字であるし、そもそものガス消費量が少なければ節約できる量も少なくなるため、ユーザー全員がこうなるわけではない。
とは言っても、石油給湯器のエコタイプであるエコフィールと比較すると断然エコジョーズの方が燃費効率が向上している。よほど普段からのガス消費量が少ないという家庭以外なら、トータルで得できるケースが多いのではないだろうか。
リンナイが言っているように、本当に年間で15000円のガス料金が節約できるなら10年で15万円だからな。上手くやれば給湯器が買える金額だ。
排出される二酸化炭素など自然に優しい
エコジョーズには二酸化炭素の削減効果もあるようだ。リンナイによると1年間で約11%の二酸化炭素が削減できるらしい。
ちなみにガス消費量も約11%カット、熱効率は約15%アップしているとのこと。自然にも優しくて家計にも優しんだから、非常に人気のある理由が分かるのではないだろうか。
本体価格が高い
そこまで神経質になるほどでもないが、エコジョーズの場合は従来型の給湯器と比べると本体価格がやや高い。本体価格よりもリモコンなどの料金の方が高くなったようなイメージもある。
ただ、ここについては各業者が価格競争をしているという意味でユーザーに残る金額的な負担は小さいものだと思っている。エコタイプが出たからと言って従来型が安くなったわけではないため、その金額差は徐々に狭まっていくことが予想されるだろう。
業者に見積りを依頼する際に、従来型とエコジョーズとで2通りの見積もりを取ってみるといい。恐らくそんなに変わらないはずだ。
従来型よりも取付費用が掛かる
エコジョーズの中には集合住宅向けでドレン配管の施工を不要とするものもあるが、原則としてはドレン配管と呼ばれる配管を施工する必要がある。
これが屋内タイプの場合、床に穴を開けてドレン配管を落とし込み、床下で排水管と接続するという作業が必要になることが多い。こうなると従来型の機器と比べて取付作業にも一手間加わることになり、取付費用も高くなると考えた方がいいだろう。
従来型よりも修理費用が掛かる
これについてはエコジョーズがどうこうというよりも「新しい給湯器に多い傾向」と言うべきかもしれない。従来型における新作はこれまでの集大成となるのに対し、ジョーズについてはまだまだ発展途上である。つまり予期せぬ不具合が起こる可能性があるという言い方もできるだろう。
それからエコジョーズには中和器という部品が搭載されており、これは一定時間使用することで必ず交換が必要になる。年間18000円ほどのガスが節約できるということだったが、この中和器の交換で15000円ほどの修理費用が掛かるというということは頭に入れておくべきだ。
高効率給湯器(エコタイプの給湯器)が出すエラー920と930の厄介さ
設置場所の違いと設置方法の違い
設置場所の違い(屋内、屋外)
給湯器には家の中や小屋の中に設置する屋内タイプと、家の外に設置する屋外タイプがある。マンションの場合は設置スペースが限られていることが多いが、戸建ての場合は選べるケースが多い。
特に屋内設置の場合、多くは洗面所に設置されていて「もっと洗面所を広く使いたい」という声も聞こえてくる。多くのユーザーは何も考えずに今までと同じタイプの給湯器を選択するケースが多いが、もし設置スペースの不満などがあるなら設置位置の変更をしてみるといいぞ。
設置方法の違い(床置き、壁掛け)
給湯器には床に置くタイプと壁に掛けるタイプがある。最近は異常気象のニュースが多く、洪水なんかで床下浸水してしまったというニュースを聞くことが多くなってきた気がしないだろうか。
特殊ケースではあるが、特に床置きにこだわっていないというのであれば「壁掛けの方が浸水などのリスクを避けられる」という意味でおすすめだ。外設置の場合は特に作業も難しくないだろうから、気になるなら相談してみるといいだろう。
ガス給湯器を選定する際に多いQ&A
ガス給湯器の号数はダウングレードできる?
弊社でガス給湯器の交換見積もりを出した際に「今使っている号数より低い号数にすることは可能か?」と聞かれることがある。当然ながら号数が低い方が本体価格は安くなるため、初期費用を少しでも抑えたいという場合は号数のダウングレードを検討したいというユーザーも少なくないだろう。
確かに「これまでは24号のガス給湯器を使用してきたが、子供たちが自立して今は自分1人だから16号に変えても不便しないのではないか」というようなユーザーの立場なら理解できるが、結論から言うと号数のダウングレードはおすすめしない。
理由は2点。1つは「号数を下げても金額的にそこまでの恩恵がないこと」。もう1つは「号数を変えることで煙突の径が変わる可能性があること」だ。以下で詳しく解説していく。
号数を1ランク下げても価格はそこまで変わらない
- 24号:357000円(税抜)
- 20号:335000円(税抜)
- 16号:307000円(税抜)
※ノーリツ製のGT-〇〇51AWX-FF-2 BLの本体価格を例に表記
上記はノーリツの給湯器の一部をカタログから抜粋したものであるが、同じ機種で号数だけが異なる3タイプの給湯器のメーカー希望小売価格である。24号と20号で2万2000円、20号と16号で28000円の金額差だ。
ここだけを聞くと「2万円~3万円の差は大きい!」と感じるかもしれないが、これはあくまでメーカー希望小売価格の差であり、本来はここから値引きがあるため実際の金額差はもっと小さなものになるだろう。
激安販売店などであれば70%~80%くらいの値引き率は珍しくないため、30000円の金額差であっても6000円程度の差にしかならないことがあることは覚えておいて欲しい。
グレードを変えることで煙突のサイズが変わる場合はさらに注意
それから屋内設置タイプのガス給湯器であれば、本体から煙突が出ているはずだ。この煙突の径が号数によって異なるため、号数をダウングレードすると開口部の穴埋めが必要になる可能性が出てくる。
例えば「これまでは24号を使用していて16号に変えたい」という場合、これまでの煙突は径が太かったが、16号に変更すると煙突の出口(壁の穴)がスカスカになってしまい、隙間風などを防ぐための穴埋めをしなければならない。
この穴埋めの部材費や作業工料で本体価格で節約した金額差が失われてしまうなんてことがザラなのである。結局トータル費用は変わらず、ただ「今後10年に渡って不便さを感じてしまうリスクだけを背負う」ということになりかねない。
給湯器のダウングレードはおすすめできない
というわけでガス給湯器の号数のダウングレードに関してはあまりおすすめしない。
もちろん屋外設置のガス給湯器で煙突の径を考えなくていい場合、使用者の数が減って不便さに対しての心配も必要ないという場合はダウングレードしてもリスクがない場合もあるから、このような場合は施工業者に相談してみることをおすすめする。
エコキュートとエコジョーズはどっちがお得?
オール電化なら電気給湯器一択
オール電化ならエコキュート一択だ。ガスも石油も不要ならエコキュートを文句なしにおすすめしたい。これは家庭に引くライフラインの数を減らせば減らすほど、それだけ基本料も掛からなくて済むためである。
石油ストーブを使い、ガスコンロを利用し、お湯は電気給湯器…なんてのは、極めて効率が悪い。一見するとリスクヘッジになるような気もするが、石油ストーブの多くは電気が止まったら動かないからそこまで大きなリスク分散の効果は期待できないだろう。
というわけでガスや石油を利用しないオール電化に魅力を感じているのであれば、電気温水器の選択をおすすめしたい。
ガスを使用しているなら電気給湯器にするメリットは無し
弊社の周りには「IHに抵抗意識があり、コンロはガスにこだわりたい」というユーザーが割と多い。こうなってくると、電気給湯器を利用するメリットはほとんどないと言えるだろう。
確かにエコキュートのランニングコストは魅力的ではあるが、初期投資の金額を考慮すると意外と財布に優しいわけでもないというケースが極めて多い。
もちろんオール電化にするならメリットが多く、ガスの基本料金をゼロに出来るという部分が大きなメリットの1つとなっているため、ガスコンロを使用するのであれば電気給湯器にこだわる必要はないと言える。
ガス給湯器から電気給湯器に変更する際の注意点
最近はリフォームの流れでオール電化に興味を持つユーザーも多く「ガスコンロをIHに、ガス給湯器を電気給湯器に変更したい」という考えを持つ人もいる。初期費用や「どっちがどれだけコスパが良いか」という部分については、ちゃんと業者から説明を受けるユーザーが大半だと思うし、特に問題ないだろう。
一方で「設置スペースは確保できるか」という部分については極めて注意してほしい。例えば洗面所にガス給湯器を設置していたという場合、もし電気給湯器に変更するのであれば今度は洗面所に設置することは難しいはずだ。
電気給湯器は中にお湯を作って貯めておく構造が主流であり、ガス給湯器のように「必要な時に必要な分のお湯を瞬間的に作る」という構造ではない。そのため常にお湯を作りためておくためのタンクが必要であり、機器本体が非常に大きい物ばかりなのだ。
そしてエコキュートの場合はエアコンのような室外機も必要になるため、どうしても外設置になるケースが多い。家の周りに電気給湯器を設置できるスペースが確保できるかどうか、そしてもし雪国住まいの場合であれば、落雪などのリスクが無い場所に設置スペースが取れるかどうかについても確認してほしい。
キッチンのみでお湯が使用できるタイプの給湯器が欲しい
給湯専用の給湯器なら風呂機能付きより安価
上記はノーリツのガス給湯器カタログを一部抜粋したものであるが、給湯専用機は定価でも16万円ほどであり、安い施工店を探せば10万円以下で手に入るだろう。
ちなみに弊社の担当地域では、この手の給湯器がアパートなどの集合住宅でも普通に使用されていて、シャワー+洗面所+キッチンでお湯を使うという用途で重宝されている。追い炊きは出来ないが、浴槽にお湯を貯めればお風呂にも入れるのが給湯専用機だ。
瞬間湯沸かし器ならキッチンで必要最低限の機能かつコスパ良し
こちらは瞬間湯沸かし器と呼ばれるもので、キッチンに取りつけてキッチンでのみお湯を使えるようにする機械だ。給湯器と比べると燃焼能力が低く、値段も給湯専用機の1/4以下でリーズナブルである。
「キッチンで最低限お湯を使えればいい」というニーズを満たしてくれるが、排気筒を設置することができないため使用中の換気が必要になる。換気をしないまま動作させてしまうと安全装置が働き、ユーザーの方でロック解除できなくなってしまうので注意してほしい(メーカーサービスを呼んで、有償で解除してもらうことになる)。
業務用のキッチン専用給湯器は話が別
「キッチンのみでお湯が使えればいい」と言う人の中には、業務用としての使用を考えている人もいるのではないかと思う。例えばラーメン屋、定食屋などのキッチンで使用するという場合は、一般家庭用の給湯器よりも燃焼能力が必要になってくるだろう。
そして美容室なんかも風呂機能はいらないだろうが、家庭用の給湯専用給湯器を選ぶことはおすすめしない。実は業務用給湯器というものも存在する。もし一般家庭用給湯器を業務に使用した場合、製品保証が適用されないのだ。
ちゃんとしたメーカー保証を受けたいのであれば、業務に使用するなら業務用の給湯器を選択してほしい。
最後に
ガス給湯器は種類が豊富でユーザーにとってのベストが異なるため、ちゃんと納得したうえで選ぶことが重要だ。特にフルオートとオートに関しては、メーカーの営業は良いことしか言わないと思うが、実際に蓋を開けてみれば「その機能って別に必要ないのでは?」というケースが少なくない。
もちろん便利だと思って購入するなら、それはそれで問題ないだろう。しかしこの先10年近くに渡って生活を共にする機械だからこそ、ちゃんと検討して機種選定することをおすすめしたい。ぜひ、参考にしてくれ。