すずき設備社長の鈴木だ。
「給湯器の交換時期ってどのくらい?」という質問をよく受けるため、本記事ではそれにズバリ答えていきたい。
身近にいる専門家に話を聞くと新しい機械を売りつけたいと考えるだろうから「まだ使えそうなのに新しい物を勧められて、何を信じていいか分からない」というユーザーも少なくないだろう。
そこで実際に設備屋をやっている筆者が、忖度無しで給湯器の交換時期の目安について解説していこうと思うから参考にしてくれ。
給湯器の機器寿命は約7年~10年
給湯器の機器寿命は約7年~10年と言われている(参照:給湯器の寿命)。
これは耐用年数の目安になっているのが「1日1時間の使用で10年」という設計基準によるもので、普通に「台所や洗面所でお湯を使用し、毎日お風呂を沸かす」という使用方法であれば、1日当たり平均1時間半くらいの使用量になるから7年~10年と表現されている。
石油給湯器の寿命と耐用年数を多くのユーザーが勘違いしている事実
もちろん1人暮らしで使用している給湯器と、4人家族で使用している給湯器の機器寿命が同じになるとは考えにくく、年数というよりは使用頻度や燃焼時間に起因する部分が大きい。
しかし「じゃあ1日10分しか使用しなければ50年使えるのか」と言われればそんなことはなく、使用していなくても水圧が掛かっていることによる劣化などがあるため、あくまで給湯器の寿命の目安と言われれば10年程度と言えるだろう。
給湯器の交換時期の目安
- 7年を超えた給湯器が故障したタイミング(修理費用が高い場合)
- 10年を超えた給湯器で、調子の良し悪しが出てきたタイミング
- 12年を超えた給湯器
弊社がおすすめしている給湯器の交換時期の目安として分かりやすいのが上記の3つである。それぞれについて詳しく説明していこう。
7年を超えた給湯器が故障したタイミング
給湯器の寿命が7年~10年であるから、7年を超えたタイミングで故障した際は給湯器の交換時期と言える。ただし壊れた部品によっては1万円~2万円程度で直せる場合もあるため、これくらいなら修理してもいいかもしれない。
もちろん修理をする業者側は「これを直せばしばらく使える」というような無責任なことは言わないと思うし「ここを修理してしばらく使えるかもしれないが、すぐにまた別の部分が壊れてしまうかもしれない」というのが本音だろう。
どうしても新しい給湯器への交換・買い替えのお金に困っていて、イチかバチかに賭けてみたいという感じであれば2万円以下なら修理してみるのもありだ。ただし7年を超えた給湯器で修理するのに10万円もかかるというような場合は、間違いなく新品に買い替えた方がいい。
給湯器の本体の種類や交換を依頼する業者にもよるが、給湯器はカタログに掲載されているのは30万~40万円ではあるものの、上手くやれば定価の半額以下で取付けできる方法がいくらでも存在する。
安くて優秀な業者に、必要最低限の給湯器を選定して貰えば、20万円以下で新しい給湯器を購入できるため、7年以上の給湯器を使用している場合は新品交換も検討すべきだろう。
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10年を超えた給湯器で、調子の良し悪しが出てきたタイミング
上記のように「給湯器が壊れてしまい、修理するタイミングで買い替えに踏み切る」というのは、コスパ的には損失の少ない方法(給湯器を最後まで使い切ったイメージ)だが、この場合は「お湯を使えない時間」が発生してしまう。
給湯器を交換する場合、通常は「現場調査→見積もり→交換依頼→本体手配→工事着手」となるため、給湯器が取付けされて今まで通りお湯を使えるようになるまで、最低でも2~3日は覚悟しなければならない(冬時期だと1週間くらいになることも)。
近くに銭湯があるという場合はそこまで困らないかもしれないが、そうでもなければ2~3日お風呂に入れない、シャワーが浴びられないというのは辛いだろう。それを恐れている場合は、壊れそうな気配を感じたら交換を検討するというのも正しい判断だ。
完全に故障してしまった場合は仕方がないが、給湯器は完全に故障してしまう前に何らかの前兆を伴うことが多い。燃焼音が普段より高いとか、ニオイが気になるようになってきたとか…。最も分かりやすいのは「変なエラーが出て、電源を入り切りしたら使えるようになった」というものだ。
このような場合、ユーザーによっては「電源の入り切りで使えるようになったから問題ない」「また異常が出たら、その時は修理業者を呼ぼう」と考えるんじゃないかと思うが、次に呼ぶときが完全に故障した時になってしまうケースが多い。
10年を超えた給湯器で不穏な空気を感じたら修理業者に点検を依頼し、そこで不安の残る診断結果が出た場合は、思い切って給湯器の交換を考えてみるのもありだろう。これなら「もしかしたらあと数年使えたかもしれない給湯器を新しい物に交換してしまう」ということになるので、いくらかの損失があるかもしれないがお湯が使えなくて困るということはない。
12年を超えた給湯器
弊社がこれまで見てきた給湯器の中で、12年以上に渡って故障を1度もしなかった給湯器はあまり見ない例である。そこから逆算すると「12年を超えた給湯器は、例え不具合の気配がなかったとしても交換を検討する」というのも1つの正解と言えるのではないだろうか。
例えば集合住宅などの賃貸物件で、人が入っていない時期なども考えられる場合はこの限りではないが、一般的な家庭の場合は12年間無故障で使用できる可能性はかなり低い。
そしてもし故障が発生した際は、「ここを修理しても、今度は別の部品が壊れてしまうかも」という展開になり、どちらにしても交換した方が無難だという結末になるだろう。
給湯器はいまや10年は使えて当然というものではない
修理が続くと交換に踏み切れなくなる
弊社のように給湯器の交換に携わっていると、ユーザーから「本当は修理してまだまだ使える物を、新しい物を売った方がお金になるから修理を諦めさせて、新しい機械を売ろうとしている」と指摘されることがある。
確かに交換してもらった方が利益になるのは否定しないが、どちらかと言えば「故障が続いた時のトラブルを恐れている」と言った方がいいかもしれない。
設備屋、水道屋の多くは「耐用年数を超えた給湯器は次々に故障してしまう可能性が高い」ということを理解しているため、修理をしてもその後の展開については責任を持てない。
新しい給湯器を取り付けて早急に故障してしまった場合などは、メーカーが責任を負ってくれるため問題ないのだが、耐用年数付近の給湯器が壊れたとしてもメーカーは「耐用年数だから仕方ない」としか言わないのである。
仮に修理をして部品Aを交換した1か月後、今度は部品Bを交換することになり、その1か月後には部品Cを交換することになった…という展開になると、ユーザーとしても「最初の段階で新品に替えてれば良かった」と後悔するのではないかと思う。
当然、我々も「だから言ったのに」というのが本音ではあるのだが、それを言うことはできず、ユーザーが無駄に出費を重ねた結果になってしまうのだ。
いまや給湯器は使用から10年経ったら点検の案内が来る
給湯器は燃焼機器であるため「設置から10年以上使用し、今後もその機種を使用する場合は専門家による点検を受けて欲しい」という案内が来るような仕組みが出来上がっている。万が一事故が起きてしまった場合、火災や一酸化炭素事故などの事案に繋がる恐れがあるからだ。これは、ガスコンロやストーブなども同様である。
ストーブなんかでも「火が吹く恐れがある」ということでリコールがあったり、製品の回収を行った例が幾つかあるが、やはり「メーカーが10年程度の使用を目安に製造した機械を、15年も20年も使って事故を起こされたのではたまったもんじゃない」というのがメーカーの本音ではないだろうか。
そのため、10年が経過した給湯器は毎年点検を受けてもらうことで、事故のリスクを減らしたいと考えているのだろう。ちなみにこの点検はユーザー負担になるため、メーカーからハガキで案内が送られてきたら、ユーザー自身で業者を手配し、ユーザー自身にお金を払ってもらうことになる。
ただし強制ではなく任意であるため、点検を受けるか受けないかはユーザーの自由だ。これで万が一事故に繋がった場合、メーカーとしては「そのリスクがあったから点検の案内をした」という事実が重要らしい。
給湯器のエラーE888、E88は点検のお知らせ|故障の合図じゃない
最後に
給湯器は家電製品の中でも高い部類の為、気軽に交換できる家庭ばかりではないのも理解できるが、家庭の中での必要度も相当高い位置にあるのではないかと思う。
そもそも毎日使うもので生活必需品の位置にあるものだからこそ、故障のリスクを理解したうえで、交換時期を見直してみて欲しい。本記事でも軽く触れたが業者を選べば割と安く取り付けることも可能だ。ぜひ、参考にしてくれ。