すずき設備社長の鈴木だ。
冬になると暖房機を使用するという人も多いと思うが、意外と「暖房ボイラーや暖房機能付きの機器寿命が分からない」という人が多いと知った。
暖房ボイラーの寿命が分からないだけならいいのだが、人によっては「給湯器の寿命が10年なら暖房機は冬しか使わないから給湯器の4倍?」という意見もあったので、微力ながら当ブログで訂正させていただく。今回は「暖房ボイラー、暖房機能付き給湯器の機器寿命に関する話」だ。
暖房機や給湯器(ボイラー)の機器寿命
給湯器の機器寿命は7年~10年
給湯器の機器寿命は設備業界では7年~10年と言われている。使用している家族の人数とか使用時間にも関係してくるから難しい部分ではあるが、メーカーで示しているひとつの指標はこれだ。
季節に関係なく動く給湯器に対し、冬~春先にかけてしか使用しない暖房ボイラーは給湯器と比べて長持ちするんじゃないかと考えている人が意外と多かったのだが、多くのユーザーは給湯器よりも長時間、暖房ボイラーを動かしてはいないだろうか?
雪国を例に出すと給湯器は1日に2時間以内の稼働時間でも、暖房機は日中ずっと付けているという家庭も少なくないと思う。基本的にボイラーの機器寿命は、年数よりも稼働時間や燃焼時間に深く関係してくるため、使用状況(1日に何時間動いているか)で判断して欲しい。
暖房機は四季で考えると使用時間は短いが…
前項のように「使用時間を考えてくれ」というと、中には「じゃあ給湯器と同じ時間しか使用しなかったら、使用するシーズンが1/4の暖房ボイラーは給湯器よりも4倍長持ちするのか?」と言ってくるユーザーもいるが、理論的にはそうなる(あくまで理論的には)。
ただし実際には循環液の劣化なんかも考えられるし、実際に使用していなかったとしても経年劣化は進むものであるから、そう極端に機器寿命が延びるということはないだろう。
車が1日〇kmの走行距離で△年持つとして「1日〇/4kmの走行距離なら△×4年持つか?」と聞かれたら、多くの人は「それはちょっと違う」と思うのではないだろうか。暖房機のように「使用する時期は何時間も使用するのに使用しない時期はまったく触らない」という使い方では、負担の掛かり方も一定とは言えない。
製造されてから10年も20年も経過した電化製品を未使用だからと言って新品扱いしていいか等、機械には「使用していない時期が長ければそれはそれで問題がありそう」という側面もあるから、このあたりは柔軟に考えてほしい。
暖房機能付き給湯器の機器寿命
一方で暖房機能付き給湯器という物も存在する。給湯器本来の機能にプラスして、暖房機能を有するものだ。都会のマンションではこのタイプが主流なのではないかと思う。この場合の機器寿命がどうなるかと言うと給湯と暖房で別々に考えるのではなく、基本的には「給湯器全体での判断になる」と思ってもらえればいい。
ただしガス給湯器の場合だと「給湯側と暖房側で部品がそれぞれ分かれている(バーナーなどの主要部品も2つ搭載されている)」というケースが多く、それぞれが独立していることも多い。例えば「暖房機能付きだけど暖房はほとんど使わない」などの場合なら「給湯機能は劣化しているけど、暖房機能は新品そのもの」というケースも珍しくないだろう。
ただ、冷静に考えてみてもらうと「東京で使用している場合と北海道で使用している場合で、同じ機器寿命になるということは考えにくい」という部分も頭に入れておいてくれ。やはり給湯器や暖房機の機器寿命は年数ではなく使用時間で考えるべきだし、あくまで平均で見れば7年~10年ということになるはずだ。
暖房機の機器寿命を少しでも伸ばすポイント
一応、暖房機を長持ちさせるためのコツのようなものがある。「これをやれば絶対に故障しない」というものではないが、少しでも早期故障の可能性を減らしたいという場合には最適だ。
- シーズンが終わったらオーバーホール(分解清掃)する
- シーズンオフ中も、たまに動かしてみる
- 不凍液(循環液)の交換や入れ替えを行う
- 少し肌寒い程度ならサブ機を活用する
シーズンが終わったらオーバーホール(分解清掃)する
新品の頃はそこまで心配する必要もないが、使用から5年を超えた暖房機についてはシーズンオフのオーバーホールを検討していもいいのではないかと思う。
石油にしろガスにしろ、燃えカスがバーナーに詰まっていると燃費効率も悪いし、故障したときに被害が拡大しやすい。本来ならバーナーの調整だけで済んだはずの故障が、あれもこれも交換しなければならないという規模の故障になったりもするため、プロにオーバーホールしてもらうというのはおすすめだ。
シーズンオフ中も、たまに動かしてみる
弊社がある地域では大体10月の後半~11月の上旬にかけて暖房を使い始めるという人が多く、その後はゴールデンウィーク前後までは暖房機と付き合っていくことになるという家庭が多い。
この時、寒くなってから動作させることで「いざ動かそうと思ったら動かない」という修理依頼が多く、使用者側としては「10月後半の稼働は準備運動」くらいの感覚でいるかもしれないが、理想を言えば準備運動の準備運動も欲しいというのが本音だ。
夏時期に暖房を動かしても、室内気温が十分すぎるから大して稼働はできないだろうが、出来ることなら「点火するくらいまでの試運転は、シーズンオフ中もやるべき」だと思っている。これは3ヶ月に1回程度でもいいから、ファンモーターが固着しないように点火動作に入るまでを確認してもらえたらと思う。
同様に機器内部、配管内部に入っている不凍液も流れが無いと固まってしまう部分が出てくるため、適度に動きを付けてあげるのが理想だ。
不凍液(循環液)の交換や入れ替えを行う
不凍液は経年劣化し、古い不凍液は配管を腐らせたり、暖房ポンプに負担を掛けたりしてしまうため、3年~5年毎に総入れ替えすることをおすすめしたい。
暖房ボイラーの説明書には3年ごとの交換を推奨している旨が掲載されているかと思うが、不凍液の交換も決して安くは済まないため、弊社では暖房ボイラーを10年使用すると仮定して「折り返しの5年時点での総入れ替え」を推奨している。
少し肌寒い程度ならサブ機を活用する
暖房ボイラーに搭載されている暖房システムは割と大掛かりなものが多く、例えば「もう完全にシーズンオフになったけど、今日はなんだか肌寒い」という時にちょっとだけ作動させるには大規模すぎる。
そういう時のためにサブ機を用意しておき、ちょっと肌寒い程度であればこれを利用するのがおすすめだ。これなら必要な分だけの稼働にとどめることができるし、結果的に暖房ボイラーへの負担も軽減することができるだろう。
特に反射式ストーブなんかは暖房機の故障時だけじゃなくて災害時にも頼りになるからおすすめだ。
最後に
暖房機も暖房機能付き給湯器も、機器寿命に関しては大差ないと思ってもらっていい。一応、メーカーの設計基準では「給湯器は毎日1時間、暖房機は毎日8時間の使用」となっている。
理論上は「暖房機も1日1時間しか使用しなければ給湯器の8倍長持ちする」ということになる。試したことはないが、あくまで理論上であるから実際には無理だと思うな。ぜひ参考にしてくれ。