すずき設備社長の鈴木だ。
石油給湯器のセミ貯湯式において「安全弁から絶え間なく水漏れしてくる」「安全弁からチョロチョロ水が漏れている」という故障は、非常に多い故障の1つだ。しかし厄介な点が1つあり、それは「必ずしも給湯器の故障とは限らない」という点である。
「急いで給湯器メーカーに連絡をしたが、修理業者から『給湯器の故障じゃない』と言われ、直っていないのに出張診断料を請求された」なんてことにならないためにも、今一度冷静になって症状を見つめ直してほしい。
そして安全弁が給湯器内蔵タイプであればメーカーの管轄になるのだが、給湯器の外側に設置されているタイプの安全弁であればメーカーにこだわる必要はないということも押さえておくことをおすすめしたい。以下では「石油給湯器の安全弁から水が漏れてくる場合の原因と修繕費用について」説明しよう。
はじめに「安全弁」を知る
本記事は「安全弁 水漏れ」で検索されることが多いようだから「安全弁ってなに?どれ?」というレベルの読者が来るとは思いにくいが、内蔵型か外付けかというややこしい話も出てくるため、まずは簡単に概要を説明しておきたい。
セミ貯湯式の石油給湯器を使用しているユーザーのほぼ全ては、安全弁と減圧弁を使用している。既に内蔵されている機種を設置しているかもしれないし、給湯器の外に安全弁と減圧弁を取り付けているかもしれない。
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減圧弁と安全弁は圧力の逃げ道を確保するために必要な部材であり、これが無いと給湯器内部の貯湯タンクが変形したりしてしまう恐れがある。
文字通り「減圧弁=水圧を弱めるパーツ」「安全弁=圧力が高くなったら弱めて安全を守るパーツ」であり、これら自体が故障してしまうと「必要以上に圧力が高くなってしまったり、圧力が高くないのに動作するようになってしまう」という症状(安全弁からの水漏れ)が出ることが少なくない。
石油給湯器の安全弁から水漏れしてくる場合の原因と修繕費用について
安全弁からの水漏れで考えられる原因
- 減圧弁の故障
- 安全弁の故障
- 各水栓からの水逆流
基本的に安全弁からの水漏れで多い3つの原因は、上記の3つだ。セミ貯湯式の石油給湯器には入水の水圧を弱めるための減圧弁と、圧力が高くなった時にそれを逃がしてやるための安全弁が必要だ。
減圧弁が悪くなっている場合は望ましい水圧まで減圧することができず、過剰分が安全弁から逃げているケースが考えられる。一方で安全弁が悪ければ本来なら圧力が高い時だけ開くべき弁が開きっぱなしになっているというケースが多い。この2点の故障は、言うまでもなく給湯器の不具合だ。
給湯器にも減圧弁と安全弁が本体に内蔵されているタイプもあれば、外付け(別売り)というケースもあるから多少は厄介であるが、いずれにしても給湯器メーカーを呼べば対応してくれるだろう。ただし給湯器メーカーの場合「初回訪問が明後日の夕方になります」みたいに言われてしまうケースがあるから、もし安全弁が給湯器の外側にある場合であれば近所の水道屋に依頼しても問題ない。
どこかの水栓から水が逆流しているケース
非常に厄介なのが「どこかの水栓から水が逆流している」というケースである。レバータイプで水とお湯を片手で混ぜられるタイプの混合水栓は、何らかの原因で「お湯側の回路に水が入り込む」ということが起きてしまい、その他の水栓や給湯器に対して悪さをしてしまうことがある。
これを修理しようと思ったら給湯器本体ではなく、原因を作っている混合水栓を修理しなくてはならない。給湯器メーカーの修理業者が自分のところのメーカーと違う会社の水栓を直すということは基本的にしないだろうから、そういう時は幅広く対応してくれる町の水道屋に頼むのが無難だ。
もちろん混合水栓のメーカー(リクシルやTOTOなど)に直接依頼するのが間違いないだろうが、そもそも「安全弁から水漏れ=何が原因か」を見抜くことが難しかったりもする。
- 安全弁から水漏れ→給湯器内蔵の安全弁の故障:給湯器メーカー
- 安全弁から水漏れ→給湯器の外付け安全弁の故障:給湯器メーカー or 水道屋全般
- 安全弁から水漏れ→水栓から水が逆流:水道屋全般 or 水栓メーカー
そして混合水栓からの逆流はイマイチ分かりにくいから、以下で詳しく解説していこう。
混合水栓から水が逆流する?
各水栓には水やお湯の逆流を防ぐための「チャッキ弁/逆止弁」という部品が設けられているが、経年劣化でこれが壊れてしまうことがある。これが壊れてしまうことで本来なら蛇口の出口にしか向かわない筈の水やお湯が、給湯器側に逆流してしまうケースがあるのだ。
セミ貯湯式の給湯器は給湯器入り口に減圧弁が搭載されていて、水圧を弱めていることがほとんどである。つまりセミ貯湯式の給湯器を使っている家では「水圧の強さ=水>お湯」という関係式が顕著である場合が多い。
- 混合水栓の中で、水がお湯側に入り込んでしまう
- 水の方が圧力が強くて、お湯を押し出す
- 押し出されるお湯は給湯器まで押し出されてしまう
- 逃げ道の安全弁から流れ出てしまう
- 外から見ると水漏れのように見えてしまう
洗濯用水栓が混合水栓の場合は要チェック
水栓からの逆流によって給湯器は故障していないのに安全弁から水漏れが確認できるケースは、前項のようなカラクリになっていることが多い。それ以外にも注意点があって、最も多いイージーミスは「洗濯用水栓からの逆流」だ。
- 洗濯機に接続されている水栓がレバータイプ
- 洗濯をするときにいちいち蛇口を開けなくて済むように、蛇口は開けっ放しにしていて洗濯機側の電源入り切りで水道を制御している
- お湯を使って洗濯をしている
上記のいずれかに該当するという場合は、洗濯用水栓から水が逆流していないかどうかを真っ先にチェックして欲しい。
洗濯機を使用している家庭の多くはいちいち蛇口を閉めたりせず、洗濯機側で止水していることが多い。この時、給湯器のレバーが中間(水とお湯が混ざっている状態)になっていると、お湯配管に水が流れていくという現象が起こる。その結果、給湯器の安全弁から絶え間なく水が漏れてしまうというわけだ。
給湯器の故障か逆流かをチェックする方法
同じ現象でもかたや給湯器の故障でかたや水栓の故障と言われてしまうと、どこを頼っていいか分からないというユーザーもいるだろう。そこで誰でも簡単に「給湯器が原因なのか、水栓の逆流が原因なのか」をチェックする方法を伝授しよう。それは給湯器への入水を一旦停止するという方法だ。
大抵の現場では給湯器に接続されている入水配管には止水するためのバルブが設けられている。ここを閉じて「給湯器へ水が入って行かない状態(家の中で蛇口を開けると水は出るけどお湯は出ないという状態)」を作ってくれ。
これで安全弁からの水漏れが止まるなら給湯器の故障、水漏れが止まらないなら水栓からの逆流となる。
バルブを閉じても「そのバルブが実は壊れていて、ちゃんと止水できていなかった」という場合は、この限りではない。
石油給湯器の「安全弁と減圧弁の故障」の際の修理費用は?
もし給湯器側に原因があるなら多くのケースで安全弁か減圧弁の故障となるわけだが、基本的には「どちらに原因があっても、どっちも交換する」というのがセオリーだ。
イメージ的には「車のテールランプ」を想像してもらいたい。片方が切れたらもう片方がすぐに切れることが想像できると思うが、給湯器における減圧弁と安全弁の関係性も似たようなものであるから、多くの場合で一緒に交換することになるだろう。
その際の費用は安全弁と減圧弁の部品代が約10000円弱(メーカー純正品の場合)、作業料が10000円~15000円、これに出張料という感じだ。大体3万円前後になることが多い。
ちなみに減圧弁と安全弁が給湯器に内蔵されている場合、もし部品交換から間もなくして別の箇所が故障してしまい本体を交換するとなったら、当然ながら「減圧弁と安全弁は新しいから次の機械でも使いたい」ということは不可能だ。
給湯器そのものの使用年数がある程度経過していて、減圧弁と安全弁が内蔵されている場合は、本体の交換も検討した方がいいだろう。
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最後に
安全弁からの水漏れは非常に多い故障内容の1つだ。ユーザーによっては「水道料金が高くなっていて初めて気付いた」というケースも少なくない。
家の外のボイラー小屋に設置されているという場合は、そういうタイミングでもないとなかなか気付かないこともあるだろうから、定期的に覗いてみることを推奨する。ぜひ、参考にしてくれ。