すずき設備社長の鈴木だ。
住宅設備に関しては、基本的に相談窓口が分かりにくい。その代表格は「給湯器」と言って間違いないだろう。例えば「風呂配管の詰まり、給水・給湯配管からの水漏れ、オイルタンクやガス配管の腐食」など、これらは給湯器のエラーや故障を引き起こす可能性のある不具合だ。
しかし、給湯器のメンテナンスでこれらは保証されていない。何が言いたいかというと「このあたりの管理をちゃんとしてないと、新品の給湯器が壊れることもあるから注意してくれ」ということなのだが…。
一般ユーザーはちゃんと説明を受けたりしない限りは「言われればそうだけど…」という、極めてピンと来ない話じゃないかと思う。そこで今回は、給湯器本体以外でメンテナンスが必要になる部分について解説していこう。
給湯器本体以外にメンテナンスが必要な部分
ふろ追い炊き配管
給湯器本体から出て、各家庭の床下を這わせて浴槽と接続されている配管だ。配管とは言っても強化ホースと呼ばれる、耐久性の高いホースが使用されていることが多い。
給湯器は約10年ごとに交換が必要になるが、ふろ追い炊き配管は「給湯器は2回~3回交換したことがあるけど、追い炊き配管は一度も交換したことがない」という人も多いだろう。
ちなみに追い炊き配管に関する不具合は「水漏れ、詰まり」などが多く、特にお湯張り機能のない現場の場合は「ヘドロ詰まり」なども心配だ。これを放置していると、給湯器のふろ機能が正常に動作しないばかりか、ヘドロが給湯器側に吸い込まれてポンプなどに悪影響を与えかねないから注意してくれ。
浴槽内の循環金具
循環金具は追い炊き配管に比べるとゴミが詰まりやすかったり、強化ホースで施工されることが多い追い炊き配管と比べると故障しやすい。こいつが原因で「ふろの温度が上がらない、ふろの温度にムラがある」という症状が出ることが多いと言ってもいいだろう。
しかもこいつは割と頻繁に不具合が起こるから「給湯器を交換した直後なのに調子が悪い→今度は循環金具に不具合」という展開もよくあり、ユーザーによっては給湯器交換の追加料金みたいに考えてしまいがちだ。しかし、これは全くの別物である。
本当に最悪なケースだと、ふろ関連の不具合が出て点検した業者が新品給湯器を売りたいあまり、機械が原因だと言い切って給湯器の交換に踏み切り、新品に替えても症状が改善しなかったということもある。
まぁ「循環金具が悪くて生じている不具合だから、給湯器本体じゃなくて循環金具を交換してやらないと改善しない」という当たり前の話だが、この辺が分かっていない水道屋・設備屋も少なくないから注意してくれ。
給水・給湯配管
給湯器の交換に際して、配管の取り回しなどが変わることがあるため、給湯器本体の接続をする部分は、多少の調整をすることがある。…が、それ以外の部分は、基本的には手を加えることはない。
運が悪ければ「給湯器交換後に配管から水漏れ」という展開もあるが、これらはたまたま運が悪かったケースが多く、給湯器の交換作業ではここまでは保証しないことがほとんどだろう。
もちろん施工時に配管に負担が掛かり、その結果「配管が折れた、配管が破れた」ということも無くはないが、この場合は現行犯でもなければ証明が難しく、業者側に責任を求めることができないのではないかと思う。
もし「給湯器を交換してから、急に水圧が弱くなった」と感じたら、勝手に「こういうものなのかな?」と自己解決したりせず、施工業者に質問することをおすすめする。あと、水道料金が極端に高くなったという場合もすぐに相談した方がいいだろう。
最近は給湯器の施工に関しても10年保証をしてくれる業者が増えてきているから、そういう業者に給湯器交換を依頼するのもおすすめだ。
暖房水配管(暖房機のみ)
暖房機能付きの給湯器、あるいは暖房専用機を使用している場合は、暖房端末を含む暖房配管の劣化にも注意してくれ。特に暖房水(不凍液)は定期的なメンテナンスが必要だということを知らないユーザーも多いのだが、暖房水を長期間交換しなかったせいで暖房端末が壊れたり、給湯暖房機本体が壊れたりというケースは非常に多い。
暖房回路内に使用されている不凍液は、2~3年に総入れ替えが必要と言われているほどの代物だ。これを一度も交換せずに暖房ボイラーを10年近くも使用するなんて、考えただけでもゾッとする。
暖房水が劣化して詰まったり配管を腐食させたりすると、もはや給湯器の交換だけでは直らないケースも出てくるから、暖房水に関しては給湯暖房機本体以上に気を遣ってもらいたい。
シャワー水栓を含む各水栓
シャワー水栓を始めとする「各水栓のサーモバルブ」が故障して、正常な温度のお湯が作れなくなるというケースも非常に多い。この場合も循環金具の時と一緒で、「温度調整が上手くいかないから給湯器本体を交換したのに、症状が変わらない」という悲劇を生みやすい。
最近は「お湯と水を混ぜられるレバータイプ」が主流となっているが、これは経年劣化で「水がお湯側の配管に逆流する」ということが起こりやすく、総じて「お湯が設定温度よりもぬるい」という症状が多いのが残念だ。
特にシャワー水栓なんかだとサーモバルブ(温度を調整できる機能)があって、こいつが壊れても温調不具合が起きやすいから注意してくれ。
オイルタンク(石油給湯器のみ)
石油給湯器を利用している人のほとんどは、家の周りに結構な大きさのオイルタンクが設置されていることと思う。こいつも定期的な交換が必要で、大半の家庭では雨で野ざらしにされている位置に設置されていることが多いので、外装がボロボロになるくらい腐食していることも珍しくない。
もちろんあからさまに雨水が侵入するということはほとんどないが、結露によって内部に水が貯まり、内部の水が多いと内部から腐食してしまって穴が空いたり、中の灯油に水が混ざってしまうことがある。その水が石油給湯器や石油ストーブ側に行ってしまうと、高確率で機器が故障してしまうから注意してくれ。
理想はオイルタンクも定期的に交換してやることだが、給湯器の業者などは直接的な不具合でもなければオイルタンクなんか確認しないし、ガソリンスタンドの配達員なんかも「頼まれた灯油を入れていくだけ」で、特にメンテナンスを促してきたりというケースは少ないような気がするから、各ユーザーが定期的にチェックしてあげることが望ましいだろう。
石油給湯器ユーザーはホームタンク(灯油タンク)の整備を怠るな
ガス配管(ガス給湯器のみ)
ガス配管は灯油配管に比べると劣化しにくいが、それでも30年以上経過している場合は、ある程度の劣化を考えた方がいいかもしれない。白菅と呼ばれる材質の場合は、内部が錆びたりして剥がれて詰まっているということもある。
さらにガス配管の場合だと「ガス会社の管理下」というイメージがあるのではないかと思うが、基本的には「ガスメーターよりも外はガス会社、ガスメーターよりも家側は住人」という管理区分になっていることが多く、家の敷地内のガス配管に関しては自己負担になるケースが多い。
最後に
以上が、給湯器本体以外にもメンテナンスが必要と思われる住宅設備だ。
もちろん細かく見て行けばもっとあるだろうが、これらに関してはユーザー発信で「点検してくれ」と依頼を受けたり、何かしらの不具合が起こってからでないと気付けないことが多い。
給湯器などの点検では、基本的には給湯器本体のみ、良くて追い炊き配管や暖房配管くらいまでしか点検してくれないこともあるから、今回紹介したような設備に関しては、定期的にユーザーがチェックする習慣を持ってもらいたいと思う。