すずき設備社長の鈴木だ。
石油給湯器には直圧式と貯湯式の2種類がある。基本的には「水圧が強くて使い勝手良いのが直圧式、水圧は弱いが腐食に強いのが貯湯式」と思って欲しい。
ガス給湯器なんかだとほぼ全てが直圧式だし、石油給湯器の場合も主流は直圧式だが、住まい環境によって「井戸水(地下水)を使用している」という場合は貯湯式給湯器を選択するケースが多い。
そんな中、ノーリツ製の石油給湯器において井戸水対応機種が登場しているのはご存じだろうか。今回はこの井戸水対応機種について紹介していきたい。
ノーリツ製石油給湯器の井戸水対応機種とは?
上記はノーリツの石油給湯器カタログであるが、ノーリツ製の給湯機は頭がOTX(あるいはOX)から始まるものが貯湯式を意味している。そしてアルファベットで「SLP」というキーワードが含まれているのが分かるだろうか。これがステンレスパイプを意味していて、外装以外がステンレス(一部樹脂、その他金属類)で構成されていることを意味している。
一般的に直圧タイプの給湯器は水通路部がほとんど銅で構成されていて、通常の貯湯タイプは給水通路部がステンレス、風呂回路が銅で構成されている。
銅は水道水ならともかく、井戸水だとすぐに腐食してしまうケースが多いため、ステンレスを使用している貯湯タイプは腐食に強いという傾向があるのだが、風呂回路が銅であれば「風呂を追い炊きする=風呂回路(銅部分)が腐食する」というリスクが付きまとうことになる。
そこで「中途半端に銅部分を残すよりは、全部ステンレスにしたら?」ということで生まれたのがSLP機種なのだろう。ちなみに銅と比べるとステンレスの方が金額的に高いため、通常機種と比べてSLP機種は少し価格的にも高くなっている。
井戸水対応機種を過信してはいけない理由
ステンレス=絶対に腐食しないというわけではない
現に通常の貯湯タイプを使用していて、これまでに水漏れの修理をした経験があるユーザーなら分かると思うが、ステンレスは胴に比べると腐食しにくいというだけで井戸水の種類によっては普通に腐食してしまうケースがある(厳密に言うとパイプや熱交換器そのものではなく、部品同士の接続部にあるゴムパッキンが先に硬化して水漏れしてくるケースが多いが)。
そして従来の貯湯タイプよりも腐食に強いのであれば期待できるのだが、従来の貯湯タイプの風呂回路が銅からステンレスに変わったというだけで、給水・給湯部分の耐腐食性は変わっていないと言える。
つまり、これまでに何度も水漏れで修理をしてきたというユーザーの中で「その水漏れが毎回、風呂回路からのものだった」というのであれば改善が期待できるかもしれないが、そうでなければ改善しない可能性が残るということだ。
井戸水対応機種とは言え、保証は効かない
給湯器には保証期間がある。「使用1年間(あるいは2年間)の間の故障は修理費用が掛からない」という内容の保証だ。
これは厳密に言うと「意図的に壊したものでないこと」等の条件が織り込まれているのだが、その条件の中に「地下水使用していないこと」という条件もある。そういうこともあって「地下水対応=地下水使用でも最低限の保証が受けられる」だと思っていたら、井戸水対応機種とは言っても保証は受けられない。
給湯器の保証期間は1年か2年だが部品によっては〇年の保証がある
現にノーリツのカタログには「井戸水、地下水を給水したことにより発生した析出物(炭酸カルシウムなど)に起因する不具合は、保証期間内でも有料修理となります」と記載があった。
ハッキリ言って地域密着型の設備屋で、その地域が貯湯タイプの給湯器だらけという状況でもなければ、井戸水対応機種を取り扱う機会が多い設備屋というのもそこまで多くないはずだから、設備屋であっても「井戸水対応機種=保証が付くようになった?」と勘違いしているケースは少なくないだろう。
保証しないということはメーカー自身も「大して耐久性が上がっていないことを暗に認めている」と言っても過言ではないだろう。個人的には井戸水ユーザーのすべてにこの井戸水特化型の給湯器はおすすめしない。
最後に
ちなみに井戸水対応機種にしても、本体価格はメーカー希望小売価格を基準に5000円~20000円程度高くなるだけであり、実際には値引きがあるためそこまで高くなるというわけではない。
過信しすぎると痛い目に遭うかもしれないし、これまで同様に保証されているという恩恵はないが、興味のある人は相談してみるといいだろう。「これまで何度か水漏れの修理をしていて、その多くが風呂回路からだった」というユーザーには文句なしにおすすめだ。ぜひ参考にしてくれ。