すずき設備社長の鈴木だ。
大人の読者なら「冬期間だけでもいいから浴槽に水(お湯)を貯めておくように」ということを聞いたことがあるという人も多いのではないだろうか。これはガス給湯器ではあまり関係なく(関係ないわけではないが)、特に石油給湯器の標準タイプを使用している人に注意してほしい事項だ。
お湯張り機能がない給湯器を使っている場合(追い炊き機能だけの場合)、ある条件下で配管内の水が出てしまい、そこに空気が入ってしまうことがある。こうなるとポンプが空回りしてしまって、追い炊き出来なくなってしまうという感じだ。
ちなみに設定状況によっては、お湯張り機能があっても弊害があるケースもあるからそれも併せて解説していく。以下では「冬期間は浴槽に水(お湯)を貯めておくのが望ましい理由」について解説するので、ぜひ参考にしてほしい。
冬期間は浴槽に水を貯めておくと良い理由
給湯器に搭載されている凍結予防機能との関連性
- 循環ポンプが空回りするとポンプの動作音が大きくなる
- お湯張り機能がない場合、風呂配管のエア抜き作業が必要になる
- 追い炊き配管内に残ったお湯が凍りやすくなる
追い炊き配管の凍結予防機能について
給湯器には凍結予防機能が付いており、それは給湯回路と風呂回路の双方に備わっている。給湯回路の場合は給湯器の内部にヒーターが搭載されていて、寒くなると勝手に温めるという仕組みだ。
一方で風呂配管の場合は、給湯器内で凍らなくても「床下などで施工されている追い炊き配管が凍ってしまうケースが多い」ため、これも同時に防がなくてはならない。かと言って、追い炊き配管にヒーターを巻くというのは現実的ではない。
そこで追い炊き配管の凍結防止には、循環ポンプが大活躍する。水は動きがあれば凍りにくいため、風呂回路では外気温が一定温度まで下がったら、わざと循環ポンプを動かして水流を作るという仕組みだ。
浴槽が空だと配管内に空気が入ってしまう
実際に火が付くわけではないから、動作としては「温かいお湯が出てこない追い炊き」と思ってもらえればいい。これが作動している時は浴槽内の循環口に手を当ててみると、しっかり水流を感じることができるだろう。
この時に浴槽内に水が貯まっている状態であれば、しっかりと水が循環するから問題ない。しかし、もし浴槽内に水が入っていなければ水は吐き出される一方になってしまい、追い炊き配管~風呂回路内に空気が入ってしまうというわけだ。
お湯張り機能があればそこまで大きな問題はない
最近のガス給湯器のほとんどはお湯張り機能が備わっているが、石油給湯器ユーザーの中にはまだまだ標準タイプと呼ばれる「お湯張り機能のない給湯器」を使用しているという人もいるだろう。そういう人の場合は追い炊き配管内に空気が入ってしまうと、その空気を取り除いてやらないと追い炊き動作ができなくなってしまうという不具合に見舞われる。
一方でお湯張り機能があれば、お湯張りをするだけで空気で満たされた配管内を再び水(お湯)で満たすことができるから多くの場合で問題ない。しかしその機能が無ければ、自分で配管内にお湯(または水)を流すという動作が必要になる。
これを「呼び水」と呼ぶが多くのユーザーは呼び水が必要なことすら知らないし、自分で挑戦しようとして循環金具を壊したり、循環金具を止めているビスを排水溝に流してしまうなどのミスも犯しがちだ。お湯張り機能がない石油給湯器を使用しているというユーザーは、寒い時期だけでも浴槽内には掃除のとき以外、水を貯めておく習慣を付けることをおすすめする。
お湯張り機能があっても問題になるパターン
一方で「お湯張り機能があるにも関わらず、追い炊き及びお湯張りができなくなる」というケースも少なからず存在する。この場合の多くは「配管内に残った少量の水が凍って蓋をしている」ということが多い。
水を貯めている場合は浴槽内だけでも200L以上の水があるわけだから、簡単に凍ることはないだろう。しかし浴槽内に水が無く、凍結予防でポンプが動いて配管内の水を吐き出してしまった場合、水を全部吐き出してくれれば問題ないが、多くの場合は追い炊き配管のたるんでいる部分などに少量の水が残る(追い炊き配管は強化ホースが使われているケースが多い)。
少量の水なら凍ってもおかしくないし、追い炊き配管に残る水はほとんどの場合で浴室の床下になるだろうから、それが凍って蓋をしてしまうというわけだ。ちなみにこの場合、お湯張り機能があるなら何度もお湯張りボタンを押しながら浴室自体を温めてやれば、勝手に解決する場合がほとんどだ。
お湯張り機能がない場合も一緒で、浴槽自体を温めてやったり、あとは浴槽に熱めのお湯を貯めてやれば配管にじわじわ熱が伝わって氷を溶かしてくれるだろう。
冬期間は浴槽に水(お湯)を貯めておくのがベスト
お湯張り機能があるなら浴槽は空っぽでもOK
以上のことから、よほどのこだわりがない場合は冬期間だけでも浴槽に水を貯めておくことが望ましい。とは言え、石油給湯器の標準タイプ以外のユーザーであればそこまで気にする必要はないだろう。
それでも凍結予防で循環ポンプが動作した時、浴槽に水が入っているのと空っぽの状態とでは、ポンプの動作音の大きさも変わってくるから、ポンプの動作音が気になるというユーザーであればお湯張り機能があっても浴槽内に水(お湯)を入れておくといい。
しかし中には「汚い残り湯をそのまま放置しておくのは気が進まない」という人もいるだろうから、そういう人でお湯張り機能のある給湯器を使用している場合は、浴槽を空にしても問題はない。
浴槽に水を貯めておくと喫水線と呼ばれる「水位の位置だけ汚れてしまう」ということが起こりやすいため、几帳面な人は掃除して綺麗にした状態で1日を終えたいという人も多いだろうし、お湯張り機能がある給湯器を使っているユーザーはそこまで心配しなくていい。
万が一、呼び水が必要になったら…
石油給湯器の標準タイプを使っているユーザーが、ついうっかり浴槽を空にした状態にしてしまい、呼び水が必要になってしまった場合の話をしよう。この場合の多くは、浴槽にお湯なり水なりを落とし入れて追い炊きボタンを押したのに「E632」が表示されて、まったく追い炊き出来ないという症状になるのではないかと思う。
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そうなった場合は浴槽内の循環口に手を当て、水流が発生していないことを確認してみて欲しい。水流が発生していないのであれば追い炊き配管が凍結しているとか、中に空気が入っている可能性が一気に高まる。
ここで呼び水動作をするのだが、肝心の呼び水動作のやり方については取扱説明書を参照して欲しい。一応ここでも掲載しておくが、使用している機種によって細かい部分は変わってくるから注意してくれ。
現場状況などにもよるが、多くの場合で「呼び水の方法2」の方が簡単にできるんじゃないかと思う。ただしこの場合は「シャワーが循環口まで届く長さであること」が必須条件だ。
あと循環フィルターを取り外すときに、物によっては3箇所くらいビスで固定されている物もある。このビスを排水口に落としてしまうのが一種のあるあるだから、これをやる際はかならず風呂栓をした状態でやることをおすすめする。
最後に
「追い炊きできない」とか「E632」などの不具合は、冬期間になると非常に多くなる。
これらは浴槽に水を入れておくだけで防げることも多く、注意しておくだけで防げた可能性も高い不具合だから、冬期間は掃除のとき以外は浴槽に水を貯めておくことをおすすめしたい。ぜひ、参考にしてくれ。