
すずき設備社長の鈴木だ。
給湯器のスペックの違いの中に「燃焼能力の差」がある。ガス給湯器は「16号、20号、24号という3種類の燃焼能力」が設けられていて、石油給湯器は「4万キロか3万キロの2種類」だ。
ハッキリ言って燃焼能力は高ければ高いほど一度に作ることができるお湯の量が増えるから、高いものを選択しておけば間違いない。しかしユーザーによっては「特に不便さを感じないのであれば、1円でも安い機種を選択したい」という人もいるだろう。
そこで今回は「石油給湯器の燃焼能力の違い」について解説していく。4万キロにするか、それとも3万キロにするかで悩んでいる読者は、ぜひ参考にしてほしい。
石油給湯器の燃焼能力とは?

石油給湯器の燃焼能力は一度に作れるお湯の量を意味している。「1calで1gの水を1℃上昇させることができる」という公式(数式)があるが、燃焼能力が高ければ高いほど大量のお湯を作りやすいし、お風呂を沸かすスピードも速くなる。
石油給湯器メーカーの大手ノーリツでは、4万キロと3万キロの違いについて「一度にたくさんのお湯が必要な家族には4万キロがおすすめ」としている。具体的には2人暮らし程度なら3万キロでOK。それよりも人数が増えるという場合は4万キロの方が無難だという判断をしているようだ。
ちなみに弊社でもよほど強い希望が無ければ4万キロの給湯器を推奨している。やはり石油給湯器ユーザーは寒い地域に住んでいるという人が多く、冬期間の使用を考えたら「少しでも燃焼能力が高いものの方が安心できる」という事情があるからだ。
4万キロの石油給湯器がおすすめのユーザーの特徴
- これまでにも4万キロの石油給湯器を使用してきた
- お湯張り機能のある機種を使用したい
- 同時に2箇所以上でお湯を使うことがある
上記に該当するユーザーには、基本的には石油給湯器をおすすめしたい。以下では簡単にではあるが、なぜ上記の条件に当てはまる場合に4万キロをおすすめしたいかという理由を述べていく。
これまでにも4万キロの石油給湯器を使用してきた

今まで4万キロの石油給湯器を使用してきて、新たに3万キロにダウングレードを検討しているという場合は注意が必要だ。能力の低いものから高いものへ変更する分には問題ないのだが、その逆となると「こんなに不便になるとは思わなかった」というケースが生まれる。
これが給湯器の場合、1年や2年我慢すれば良いというものではなく7年~10年に渡って付き合っていくことになるから、後悔の大きさはハンパ無いものになるだろう。
今まで4万キロが取り付けられていたということは、もしかすると「家を建てたタイミングで4万キロの石油給湯器が選定されていた」ということが考えられるが、これも「配管の長さなどを考慮して大工がそれを選定した」という可能性もある。
いずれにしても、4万キロを3万キロに変更することで得られるメリットは一時的な費用の問題しかなく、デメリットは「その後で不都合が生じるリスク」となり、メリットに対してあまりにもデメリットが大きいとだけ言っておこう。
お湯張り機能のある機種を使用したい

石油給湯器にも様々なラインナップがあるが、とりわけ「お湯張り機能を有する機種」に関しては4万キロの方がおすすめだ。お湯張り機能を使う場合は、各家庭の浴槽のサイズにもよるだろうが、大体200リットル前後のお湯を張るまではずっと動作し続ける。
この時、絶対に他の蛇口でお湯を使わないというならいいのだが、そうでもない限りは絶対に4万キロの方が不便は感じないだろう。ちなみに3万キロの機種となるとそもそもお湯張り機能がなかったり、エコタイプの給湯器にしようと思った場合に「設置場所や排気方式が制限される」ということがある。
あくまで主流は4万キロで、豊富なラインナップが用意されているのも4万キロの話だから、3万キロを選択するという場合は「現在の設置箇所にそのまま設置できるタイプが存在するかどうか」も一緒に確認した方がいい。

3万キロだと単純にお湯張りする時間も長かったりするから、追い炊きのみならまだしもお湯張り機能を使っていきたい場合は4万キロをおすすめするぞ。
同時に2箇所以上でお湯を使うことがある

誰かがシャワーを浴びている時に台所でお湯を使ったりする状況がイメージできるのであれば、4万キロを選んだ方がいい。一度に作れるお湯の量が違うということは、2箇所で同時にお湯を出した時に「作れるお湯に対して使用量が上回ってしまう」ことが想定される。
こうなると1箇所あたりのお湯の量を絞ってそれぞれの蛇口にお湯を供給することになるのだが、シャワーを使用している側のストレスは大きいものになるだろう。もちろん4万キロだからといって、2箇所でお湯を使ってもストレスフリーだということはないが、3万キロだとそのストレスが顕著に現れると思っていい。

シャワーを浴びながらそれと同時に風呂を追い炊きするという場合も、4万キロの方が望ましいと言える。
3万キロに変更する際の注意事項

- 4万キロと3万キロで、そもそも金額差があまりない
- 3万キロの機種のラインナップは限りがある
- 修理費用、機器寿命に差はない
4万キロと3万キロの本体価格には微妙な差しかない
4万キロから3万キロへの乗り換えを検討しているユーザーは「金銭的な問題から、少しでも安い給湯器を選びたい」という人が多いのではないかと思う。ハッキリ言うと4万キロと3万キロの給湯器で値段だけを比較した場合、実はそんなに大きな金額差はない。
ノーリツ製の壁掛け給湯器、標準タイプ(お湯張りがないタイプ)で比較してみると、4万キロの給湯器が305000円で3万キロの給湯器が285000円だ。これはあくまで定価だからここから一定の値引きがあって取付料などが乗っかることになるのだが、本体価格から50%の値引きがあったと仮定すると、両者の金額差は10000円ということになる。
ちなみに石油給湯器本体の価格についてだが、定価はあってないようなもので業者によっては5割以上の値引きを当たり前にしてくれることがある。弊社の場合は機種によっても変わってくるが、ノーリツ石油給湯器の人気のあるタイプなら6割~7割引きで提案しているため、50%の値引きがそんなに珍しい事ではないということを補足しておこう。
不便な物を向こう10年使っていくリスクを考えよう
さて話は戻るが初期費用で1万円程度の差ということは1年で1000円弱、これを7年から10年に渡って使用することを考えると、1ヶ月あたり100円未満の金銭的な負担を避けるために不便になるかもしれないリスクを背負うことになる。
1円でも倹約したいという状況なのであればこれも仕方ないかとは思うが、そうでもなければ今一度考え直して欲しい。不便になってしまった場合のストレスを金額に置き換えたら、一気に損をしてしまうことになりかねない。
ちなみに3万キロの機種のラインナップは4万キロの機種と比べると大幅に少ないため、今使っている機種と同等の物で3万キロの給湯器というものが存在していない可能性もある。そこで取付作業に手間が生じてしまったら、せっかく倹約した部分の10000円は簡単に吹っ飛ぶ可能性があるから注意してくれ。

3万キロだと「燃焼能力が低い=部品代も安いのでは?」と思いがちだが、部品は同じ物が使われていて、基板で能力を制御しているというパターンも多いから修理費用についても恩恵はない。
最後に
石油給湯器に関しては、燃焼能力で節約しようと考えることは基本的にはおすすめしない。もし弊社に給湯器交換の依頼があって「少しでも安くしたいから3万キロの見積もりがほしい」と言われたら「即決してくれるなら3万キロの見積り料金で4万キロを取り付けてもいい」と交渉することもある。
それくらい、銭的には大した差がないわけだから、悩むくらいなら4万キロの方がいいだろう。ぜひ、参考にしてくれ。