すずき設備社長の鈴木だ。
ガス給湯器が故障した時、自分の給湯器が長持ちしたのかどうかを気にするユーザーは非常に多い。平均より長く使用できたならいいが、そうでなければ給湯器本体の交換よりも修理に気持ちが傾くことも多いだろう。
しかしガス給湯器が寿命や耐用年数を迎えている時、修理をしても次々と故障が続いてしまい、結果的に「あの時、修理じゃなくて交換しておけば良かった」と後悔してしまうケースが少なくない。以下では「ガス給湯器の寿命と耐用年数|交換のタイミングの目安」について解説するので、ぜひ参考にしてほしい。
ガス給湯器の寿命は10年
ガス給湯器の設計上の標準使用期間について
給湯器の寿命は7年~10年と言われているが、これは「設計上の標準使用期間」と呼ばれるものだ。給湯器はこの基準に沿って製造・販売されている。
具体的な数値は「1日1時間の使用で10年間」というのが1つの基準だ。もちろん設定温度にも左右されるから、あくまで大まかな基準として押さえておいて欲しい。
以下にリンナイのカタログに掲載されている標準使用条件を引用しておく。細かい情報が知りたいという場合は各給湯器の取扱説明書にも同様の条件が掲載されているはずだから、そちらを参考にしてほしい。
ガス給湯器の燃焼能力(号数)による寿命の差は無い
家庭用ガス給湯器には16号/20号/24号の3種類があるが、これらによって機器寿命が大きく変わってくるということはない。号数が高い方が燃焼能力が高いということになるが、あくまで機器寿命に関係してくるのは「使用時間や点火回数、入水温度と出湯温度の差」である。
標準使用条件では「15℃の水を40℃のお湯にする」という条件になっているため、寒い地域の場合は平均水温が15℃を下回るケースもあるだろうし、40℃以上に設定して使用している家庭も少なくないだろう。
ガス給湯器を選ぶとき、本体価格が高くて燃焼能力の高い24号の方が長持ちするように感じるかもしれないが、住んでいる地域や使い方に左右される要素はあっても号数によって機器寿命が変わるということはない。
機能の複雑さによって給湯器の機器寿命は変わる
これは当たり前と言えば当たり前なのだが、機能が複雑であれば複雑であるほど機器寿命は短い。「単機能>給湯+風呂追い炊き機能>給湯+風呂自動湯張り機能>給湯+風呂+暖房機能」と言っていいだろう。
ただお湯を作れるだけのガス給湯器と、お湯も作れて風呂も沸かせて暖房までできる給湯器の機器寿命が一緒なわけがない。給湯器は複雑になればなるほど部品の点数も増えるし、部品の点数が増えるということは「故障する可能性がある箇所も増える」ということを意味する。
昔のシンプルな機械は長持ちしたが、それは構造がシンプルだったことが関係している。確かに故障しにくくなるような技術も発達はしているが、それ以上に安全装置なんかが複雑化していて機器寿命は長くなっていない。
使用開始から10年を迎える給湯器は点検の対象
2009年以降、給湯器を取り付けた際は所有者登録が必要になった。これにより給湯器の製造番号と設置されている場所(ユーザーの名前や住所)を紐付けることになっている。所有者登録をしたユーザーの元には、使用開始から9年ほど経過した段階でメーカーから点検のお知らせが送られてくる。それだけではなく、給湯器のリモコンにも888(または88)の表示が出て、点検時期を知らせてくる仕様に変わった。
これらは給湯器メーカーがユーザーに新しい給湯器を売り付けたいという思惑から始まったものではなく、経済産業省主導のもと「長期間使用した給湯器による事故を無くすため」という明確な目的がある。
ちなみに点検を受けるかどうかはユーザー次第で費用は10000円程度だ。もちろん強制ではないが、そのうち義務化になる可能性は十分に考えられるだろう。いずれにしてもガス給湯器を10年以上使用することは当たり前のことではなく、むしろ点検をお願いされるほど特殊なケースだと思った方がいいかもしれない。
給湯器のエラー888、エラー88は点検のお知らせで故障の合図じゃない
ガス給湯器を交換するタイミングの目安
ガス給湯器の普段の点検項目について
ガス給湯器の交換のタイミングは故障の規模によって大きく左右される。1万円~2万円程度なら修理も良いが、修理金額が高くなるにつれて「修理よりも交換した方がいい」という判断に繋がりやすい。
給湯器の異変や故障の前兆を早期に発見することができれば、おのずと給湯器の修理も最低限で済むため、なるべく給湯器の異変には早く気付くのが理想だ。
そこで普段から上記の項目をチェックすることをおすすめする。特に「水漏れ、異音、排気口周りの煤汚れ」は給湯器の経年劣化が出やすい部分だから定期的にチェックしてもらいたい。
異音は燃焼不具合に繋がることが多く、水漏れや燃焼不具合は放置することで二次被害に繋がる恐れがあるため、そのまま使用してしまうと故障した時の修理金額が膨れ上がってしまうのだ。意外とユーザーの「なんかガス給湯器の音が大きくなった気がする…」という気付きは、故障の早期発見に繋がることも多いから注意深く観察してみてほしい。
ガス給湯器の経年劣化のチェック項目
- 【エラー】給湯機器のリモコンに時々、エラー 表示が出る
- 【 音 】運転中の給湯機器から、普段、感じたことのない異音がする
- 【 温 度 】使用中、お湯の温度が熱くなったり、ぬるくなったりすることがある
- 【 症 状 】時々、お湯にならないことがある
- 【 症 状 】給湯機器より水漏れしている
- 【 外 装 】給湯機器の外装下部がひどく錆びている
- 【 外 装 】給湯機器の排気口の周りが黒くなっている
上記はガス給湯器が経年劣化しているときに出やすい症状の一例だ。エラーが出ているような場合は経年劣化というより故障していると言っていいが、給湯器はエラーが出ていないのに故障しているというケースが少なくない。
特に古い給湯器が限界を迎えている場合、温度調整系の不具合は極めて多い。出湯温度にムラがあったり、お湯を使っているとたまに冷たくなる瞬間があるという場合は、完全に故障してしまう前に点検してもらうことをおすすめする。
10万円前後の高額修理よりも本体交換がおすすめ
給湯器を交換するタイミングで最も多いのは、故障したタイミングで修理と買替を天秤にかけるパターンだ。1万円~2万円程度の修理なら、ダメ元で修理してみるというユーザーも多いが、5万円を超えてくるような修理になると慎重になった方がいい。
もしかすると給湯器のカタログを見て、給湯器の価格の高さに驚いている人がいるかもしれないが、給湯器のメーカー希望小売価格は見せかけの金額であり、そこから大幅値引きされるのが普通だから心配無用だ。
これは住宅設備直販センターいえすとと呼ばれる施工業者の施工例であるが、30万円オーバーの給湯器が135900円で取付けできて更に10年保証のおまけ付きだ。これは16号追い炊き機能付きエコジョーズであり、燃焼能力がもっと高いガス給湯器や暖房機能付きのガス給湯器を選ぶのであればもう少し高くなってしまうが、カタログに掲載されている本体価格の60%~80%の値引きがあることは珍しくない。
給湯器を修理した場合、どうしても「修理しなかった部分が故障してしまうリスク」と付き合わなければならないため、使用年数が7年以上で高額修理になる場合は思い切って交換した方がリスクが少ないだろう。ちなみに住宅設備直販センターいえすとは、関東と関西の一部で活動している施工業者だ。該当地域に住んでいる方は見積もりを頼んでみることをおすすめする。
最後に
ガス給湯器の寿命は10年だが、これは1日1時間の使用という基準になっている。そしてほとんどの家庭では1日に1時間以上使用していることが多い。ちなみに30分しか使用していないからと言って20年使用できるというものではなく、あくまで1日1時間という基準である点は注意してほしい。
給湯器は長く使うことで安全面でのリスクも無視できなくなってくるため、長く使うことにはこだわらず本体交換ありきで修理を検討することをおすすめする。ぜひ、参考にしてくれ。