すずき設備社長の鈴木だ。
雪国に住んでいるという方の中には、給湯器を凍結破損で壊してしまう人も少なくない。特に冬休み、正月休みの実家帰省のタイミングは要注意だ。基本的には水抜きさえしっかりしていれば凍結破損は起こらないのだが、人によってはやり方を間違っていたり、ついうっかりしてしまうということもあるだろう。
以下では「給湯器を凍結破損させてしまった場合の修理金額・修理費用」について解説するので、ぜひ参考にしてほしい。
給湯器を凍結破損させてしまった場合の修理金額・修理費用
給湯器が凍結破損してしまう原因
給湯器の内部には色々な部品があるが、基本的には「水通路部、燃料通路部、電装部、燃焼部、性能部品、非性能部品」の6つから構成されている。凍結によって破損するのは水通路部だ。読んで字のごとく水が通るから水通路部というわけだが、この中には熱交換器や水メカ、パイプなどがある。
熱交換器は銅やステンなどの金属でできていることが多く、水メカは樹脂(プラスチック)で作られていることが多い。これらが水で満たされている状態の時に部品の中の水が凍ってしまうと、それが膨張して部品を壊してしまうというわけだ(水は凍ると膨張するため)。
基本的に給湯器内には、凍結を防止するためのヒーターが搭載されているから、電気が通っている状況であれば凍るということは考えにくい。しかしブレーカーを落としていたりなど「通電していない(ヒーターが作動しない)という状況を作ってしまった場合」や、そもそものヒーターが壊れていた場合なんかだと、凍結破損に繋がってしまうことが考えられるだろう。
たまに「凍結させるのが怖くて給湯器リモコンの電源は入れっぱなしにしている」というユーザーがいるが、給湯器の凍結予防は給湯器に通電していれば勝手に動作するから、操作リモコンの電源の入り切りは関係しないぞ。
給湯器の凍結予防・凍結防止はリモコンの電源を入れておく必要はない
凍結破損の際にかかる修理費用
水メカ1点の交換だと20000円程度
では給湯器を凍結破損させてしまった場合、どれくらいの修理費用が掛かるのかという話になるが、基本的にはケースバイケースである。というのも給湯器の内部でどこが破損したかによって、交換しなければならない部品が変わるからだ。
しかし、これまで弊社にて凍結破損の現場を見てきた経験上は、給湯器の出口や入口にある部品が1番壊れやすいように思う。具体的な部品名を挙げるとすれば「水量サーボ、水比例弁」などの温度調整をしている樹脂製の水メカが怪しい。もし水メカ1点の破損で済むのであれば、部品代と作業料、出張料を含めて20000円も見ていれば十分なはずだ。
凍結破損はすべての水メカに故障の可能性がある
凍結破損の厄介な部分は「どこまで壊れているかが見た目では分からない」という部分である。
これは取引先のとあるメーカーサービス(給湯器の修理を専門としている人間)に聞いた話だが「修理費用を抑えるためには、まず見た目で破損している部品だけを交換し、その後で1回通水試験をしてみて水漏れがないのかどうかを確認したい」のだそうだ。
見た目で分からないような小さいヒビが入っていたりした場合は、この時点でまた水漏れしてくるため、その上でまた部品交換するのが基本らしい。しかし凍結破損している場合の多くは冬場で、一刻も早く直して欲しいというユーザーがほとんどであるから「1回で修理を終わらせるために、全部の水通路部を一気に交換するケースも少なくない」のだそうだ。
この場合の費用は50000円をゆうに超えてしまうことが多い。つまり1番オーソドックスなパターンとしては、水比例弁、水量サーボ、注湯電磁弁などの樹脂製の水メカを全部壊れているテイで交換し、ここで一旦通水試験を行い、熱交換器やパイプが破損していた場合は再度部品交換となる。
凍結破損した際の修理費用を抑えたいという人は…
前項でも軽く触れたように、修理業者の立場からすると「壊れていない部品も交換する=売り上げに繋がる=修理も早期に解決し、ユーザーも満足」という絵が描けるわけだ。そして「どこまで壊れているか分からないから全部一気にやる」という大義名分もできるし、ハッキリ言って修理業者の立場からすると美味しい修理である。
ただ、もし「時間が掛かってもいいから壊れている部分だけを交換して欲しい」というユーザーにとってはたまったものじゃないだろう。そういう場合にしっかりと説明してくれる人間と、全部壊れているというテイで話す人間がいるから注意してくれ。
選ばせてくれる人間相手なら、自分にとってどっちがいいのかを判断して決めればいいし、もし全部壊れているというのであれば、部品を置いていってもらえばいい。そして実際に破損しているかどうかを自分の目で確認し、もし破損が確認できなければメーカーのコンタクトセンターにクレームを入れるのもアリだと思う。
部品を置いて行ってもらう部分については、修理業者の人に「本当に壊れているかどうか、知り合いの水道屋に見てもらう」とでも言っておくだけでも、余計な修理をされないためのある程度の抑止力にはなるだろう。
賃貸物件の場合、ユーザーに請求が上がるケースも
凍結破損で注意しなければならないのは「水抜きをしていれば問題なかった(故障しなかった)」と捉えられてしまう点で、ユーザーの過失によって凍結破損した場合は賃貸物件であっても入居者に請求されるケースも少なくない。
特に多いのは社宅などでバランス釜を使用していて、バランス釜の凍りやすさを見くびって凍結させてしまうパターンだ。あとは給湯器ユーザーの中でも「冬期間に浴槽内に水を入れず、追い炊き配管が凍結してしまって修理業者を手配する」というケースも多い。
賃貸物件や社宅の場合、通常故障で入居者に請求がいくケースはほとんど見ないが、凍結破損の場合は入居者の過失かどうかを確認されることが多く、入居者に請求がいくケースも普通にあるから注意しよう。
凍結予防ヒーターが故障したせいで凍結したという場合はユーザーの過失にならないが、それ以外はユーザーの過失と判断されることが多い。
給湯器の凍結破損を防ぐためには?
- 大元の水を止めたうえで、配管内の水を抜く
- 少量の水を流しっぱなしにする
凍結破損を防ぐためには氷止めを作動させるたけでなく、配管内に残っている水を抜くことが最も重要で、氷止めだけでは凍結を防げないこともあるから注意して欲しい。理想は「蛇口を開けた状態にして配管内に空気を入れてやり、配管内の水を抜くこと」であり、氷止め処置をしただけで満足しないことが重要だ。
また「明日は大寒波になる」というような一時的な凍結予防として、蛇口を少し開けてチョロチョロ流しておくというのも有効である。基本的には電源さえ入っていれば凍ることは考えにくいが、凍結破損はしなくても屋外の水管が凍ってしまい、給湯器への入水ができないという状況が起きることは予想できる。
そこで、このようにして水をチョロチョロ流しておくことで、凍結によって給湯器が使用できなくなることを防ぐこともできるから、一晩の対策としてはおすすめだ。
水溜りの水は凍ってしまうが、川のように水に動きがある場合は簡単には凍らないのと同じ理屈である。一晩限りの応急処置としては極めて優秀な方法であるため、ぜひおすすめしたい。
給湯器の凍結、配管の凍結を予防、解消するための3つの方法とは?
最後に
凍結破損の多くは、自分の気の持ちようで防げる内容だ。しっかりしていれば防げた修理内容に、5万円も取られてしまったら悔やんでも悔やみきれないだろう。
もしユーザーの過失によって凍結破損をさせてしまった場合、賃貸物件とは言っても使用者に請求があがることもあるから、十分に注意することが大切だ。ぜひ、参考にしてくれ。