すずき設備社長の鈴木だ。
暖房機器で使用している不凍液は徐々に量が減ってしまい、一定量を下回るとエラーを出して止まってしまうことがある。この時、持ち合わせの不凍液を補充したが、どうしても「あともうちょっと量が足りない」というケースもあるだろう。
この時、多くのユーザーは「水で薄めたらまずいのかな?」と思うのではないだろうか。というか暖房機器の動く仕組みを少し理解している人なら、割と何も考えずに水を補給しがちなのではないかと思う。以下では「暖房機器で使用している不凍液を薄めるのは問題ない?」というテーマで進めていく。
不凍液を少し薄めるくらいなら問題ない
結論から言うと暖房機器に使われている不凍液を少し薄めるくらいなら問題はないと言える。そもそも不凍液には希釈済みの物と原液の2種類が存在するのだが、住んでいる地域によって気温は変わるから、それに合わせて施工業者が原液を希釈しているケースも多い。
具体的に言えば、-25℃対応の不凍液を大体-10℃くらいになるように希釈する場合などが挙げられる。「冬はどんなに寒くても0℃を少し下回るくらい」という地域なら、-10℃でも十分すぎるだろう。
では「少し薄めてもOK」の少しがどれくらいになるかという話だが、これは使用している不凍液の総量によって変わるためここで言うことは難しい。
さすがに「不凍液が10リットルしか入っていないところに、ただの水を3リットルも4リットルも追加する」というのは推奨できないが、暖房端末が3つ以上あるのであれば500mlくらいの追加は問題ないというケースが多いはずだ。
多少なら問題はないが、その多少のレベルが全く分からないというユーザーが変に手を出すのは危険だということは覚えておいて欲しい。
不凍液を水で薄めることの弊害
凍ってしまうリスクが出てくる
不凍液は文字通り凍らない液体のことであるが、水で薄めすぎると凍ってしまうリスクが出てくる。水は凍ることで体積が増えることが知られているが、もし暖房配管が凍ってしまうと「家の中を張り巡っている暖房配管が破裂する恐れがある」のだ。
暖房ボイラーそのものが壊れてしまっただけなら、本体を交換してやったり破損した部品を交換してやるだけでいい。しかし床下配管が破裂したとなれば修理の規模はとんでもないことになるだろう。
そのリスクを回避するために水ではなくて不凍液を使用しているのだから「不凍液の濃度を薄めすぎた結果、凍るようになってしまった」では本末転倒である。
不凍液の防腐性能が失われる
不凍液には「配管を腐食させない」という性質もある。
氷点下以下にならないという地域に住んでいる人の中には「凍る恐れはないんだから不凍液じゃなくて水でもいいんじゃない?」と思う人がいるかもしれないが、暖房配管が腐食してしまうようであれば、それは凍結破損と変わらない。
暖房配管に金属管を使用しているのであれば防腐性のある不凍液を使用することが望ましく、不凍液が薄まってしまうと防腐性能も失われてしまうから、過度に薄めてしまうのはリスクが高くなると言えるだろう。
不凍液を水で薄めるのはあくまで応急処置
ここで注意してもらいたいのは「不凍液を水で薄めるのは、あくまで応急処置である」ということだ。毎年、暖房を使うシーズンになるとエラー043が表示されて、その度に水を追加するというのでは上手くない。
できるなら同じ補充でもちゃんとした不凍液を補充して欲しいし、もっと言えば「3年~5年に一度は不凍液の全交換」をして欲しいと思う。
暖房ボイラーの取り扱い説明書を見てもらえば分かるが、各メーカーは3年に一度の不凍液入れ替えを推奨しているため、不凍液はただでさえ経年劣化しやすいということが分かるだろう。これを水で薄めるという行為がどれほどリスクを背負うかどうか、今一度考えてもらいたい。
例えば正月付近でエラー043(不凍液不足のエラー)が出てしまい、業者を呼ぼうにも業者がすぐ来れないなどのケースでのみ、仕方なしに応急処置するというくらいに留めて欲しいというのが本音だ。
もちろん自分の家の暖房配管の規模を理解していて、ちゃんとした知識を持っている場合はこの限りではないが、そうでもなければ不凍液を水で薄めるということは極力しない方がいいだろう。
最後に
ヤフー知恵袋なんかを見ていても、無責任に「不凍液は水で薄めても問題ない」と言う奴がいるが、仮にそれで暖房配管が破裂したり、暖房ボイラーが故障してもそいつは責任を取ってくれない。
慣れている人は「どれくらい薄めたらまずいか」を感覚で理解しているだろうが、全くの初心者はその感覚がないから怖い。どうしても水で薄める必要が出てきた場合はあくまで応急処置に留め、時期が来たら総入れ替えなり点検なりをしてもらうといいだろう。ぜひ、参考にしてくれ。