すずき設備社長の鈴木だ。
最近はエコ給湯器からエコ給湯器に買い替えるユーザーもかなり増えてきて、時間の流れる早さを痛感している。そんなエコ給湯器には「中和器」と呼ばれる部品が搭載されているのだが、ユーザーの中には「そもそも中和器って何だ?中和器って本当に必要なのか?」と思っているユーザーも少なくない。
以下では「エコタイプ給湯器の中和器の役割|給湯器に中和器が必要な理由」について解説するので、ぜひ参考にしてほしい。
エコタイプ給湯器に搭載されている中和器とは?
エコタイプ給湯器のドレン排水は中和が必須
中学校の時の理科の授業で、リトマス試験紙なんかを使って「酸性/中性/アルカリ性」という勉強をしたのを覚えているだろうか。
1本の直線で考えた時に左側が酸性、右側がアルカリ性とすると、真ん中にくるのが中性である。中和というのは傾いているpH(酸性とかアルカリ性)を真ん中に持っていく作業だと思ってほしい。
中和器はエコジョーズやエコフィール等の高効率型給湯器に搭載されている。エコタイプの給湯器は燃焼することで出た高温の排気ガスを一旦機器内に取り込んで、その熱すらも再利用するという仕組みだ。
この時、機器の内部では結露しており「給湯器が汗をかいている状態」なわけだが、この汗が酸性なのである。排水管の素材が酸性に耐えうる物かどうかは現場によって異なるため、ドレン排水は中和してから排水してやるのが望ましい。これを担っているのが中和器である。
中和器は給湯器の使用時間によって交換が必要
これまでは修理履歴なしで10年以上使える給湯器も珍しくなかったが、給湯器が高性能になって複雑化していく過程で機器寿命は少しずつ短くなっていった。そして中和器の存在がそれを一気に加速させることとなる。中和器は故障とか故障じゃない以前に「時間経過で交換が必要な部品」である。
早い話が電池みたいなものだと思ってもらってもいい。ただし交換費用としては数百円で済むような電池とは違い、20000円弱ほどの修理・交換費用が発生するから注意すべきだろう。
ちなみに給湯器の場合は、任意で加入する保証延長に加入しているというユーザーも少なくないだろうが、この中和器は必ず交換が必要になることがメーカーも分かっているから保証対象外である。
燃費の良さをアピールしてエコ型給湯器を売る業者は多いが、その一方で交換必須な中和器が存在するなど、デメリットもないわけではない。多くのケースでトータル的にはお得になるだろうが、そもそもの使用量が少なければ得をしているか微妙かもしれないぞ。
中和器のエラーに関する注意事項
E920の場合はエラー表示をしながらもお湯は使用できる
- E920:中和器寿命予告
- E930:中和器寿命告知(機器停止)
中和器の寿命に関するエラーは2種類存在する。これはリンナイもノーリツ共通のエラーコードで、それぞれE920とE930というエラー番号だ。どちらも中和器異常のエラーであるが、この両者には大きな違いがある。それは「お湯が使えるか、使えないか」というものだ。
中和器自体が故障することはほとんどなく、多くは「中和器としての機能が薄れてしまうほど使い込んだから、そろそろ交換してくれ」という意味でエラーを出す。
これは給湯器の使用時間で制御しているわけだが、例えば100時間がタイムリミットだとしよう。90時間で一旦「そろそろ交換時期だぞ」というエラーを出し、それをユーザーに知らせてくれる。これがE920だ。
E920は一定時間後にE930に変わり、お湯が使えなくなってしまう
E920の表示がされた段階で修理依頼をする人もいれば、説明書を読んだりネット検索したりする人もいるだろう。これらの人なら「中和器を交換しなければならない」という結論に辿り着くから問題ない。
しかし「お湯は使えてるし、何なんだろう…」と疑問に思いながらも、それを放置するユーザーもわずかながら存在する。そうすると一定時間経過後にE920だったエラーがE930へと変わり、給湯器は停止してしまうのだ。
修理業者にもよるだろうが、中和器は毎日持ち歩くには邪魔になるほどの大きさがある部品のため、車に入れて持ち歩いているということは考えにくいし、会社倉庫に在庫として所有しておくケースもそこまでない。
その理由はE920を表示してからお湯が使えなくなるまでの間に、一定時間の猶予があるからだ。「E920を確認してすぐに修理依頼をすれば、お湯が使えなくなるという時間がなく修理可能であるのに対し、E930に変わってから修理依頼をするとお湯が使えない日が数日間続く」という恐れがあるから注意してほしい。
高効率給湯器(エコタイプの給湯器)が出すエラー920と930の厄介さ
中和器寿命の時期によっては本体交換も視野にいれるのが〇
中和器がいつ寿命を迎えるかはユーザーの使用頻度によるから何とも言い難いが、使用年数によっては「中和器が寿命→中和器を交換しよう」という短絡的な考えは勿体ない。
基本的に中和器が寿命を迎える頃には給湯器自体がそれなりに経年劣化しているだろうから、何も考えずに修理に踏み切ったのでは大きな損につながってしまう可能性がある。まして中和器の交換は約15000円前後の修理であることが多く、給湯器修理の金額としては安い方だ。
これを皮切りに修理が立て続けに発生した場合、中和器の交換なんかせずに新しい給湯器に買い替えておけばよかったというユーザーも出てくるだろう。これはあまりにも勿体ない。
さすがに6年以内に中和器が寿命を迎えた場合は微妙だが、給湯器の寿命である7年目以降にE920が出た場合は給湯器交換も含めて検討することをおすすめする。
最後に
修理業者ならエラー番号を聞けば中和器異常だという判断もできるだろうが、時間帯によっては既に現場に出ている時に追加訪問というカタチでユーザーの家に行く場合もある。
そうなると事前に部品を準備するということは難しく、前もって用意していない中和器を持って行くなんてことはできない。そもそも修理依頼した当日に修理が完了するとは思わない方が無難だ。
中和器の場合は一定時間経過後にお湯が使えなくなるリスクもあるから、E920の表示を確認したらすぐに修理依頼することをおすすめする。ぜひ、参考にしてくれ。